『子どものものさし』松田道雄

親愛なる街のお爺ちゃん先生が語る、昭和の回顧録と子育てへのエール

松田道雄 子どものものさし (STANDARD BOOKS)

 

本書は平凡社のSTANDARDBOOKSシリーズ。このシリーズは装丁、判型ともにすっきりしていてデザインが特徴的で、本棚にあるとお洒落な印象。

 

著者は初代は千姫の侍医と伝わる医者の家系、街の小児科医として20年以上勤めた経験から綴る著書は、子どもへのあたたかい眼差しに溢れた語り口が魅力的である。本書は子育て、独立した人間、医療をテーマに過去作品から一部抜粋してまとめた、小品のかたち。

 

表題にもなっている「子どものものさし」とは、価値観はひとりひとり異なるもので誰かから押し付けられるものではないことを指しているようにみえる。

心のなかにものさしをもっているのは、おとなだけと限らない。子どもだって子どもなりにものさしを心にもっている。

(中略)

りっぱな人間に子どもがなってくれることをのぞむなら、子どもに自分のものさしをつかう機会をあたえねばならない。

 

また医学的な内容は昭和の著書ということを差し引いても、病いの歴史という点で参考になった(結核の流行など、時代を感じる)。

 

「定本 育児の百科」を先に読み、もっと著者を知りたくなったので今回本書を手に取った。親身になって親に寄り添い安心感を与えるアドバイスはもちろん、ていねいで優しい筆致にほっこりする。